子どもでも比較的簡単に大物が釣れるアメリカナマズ釣りは、テレビで取り上げられる機会も増えており、最近人気が出てきている釣りのひとつです。小物釣りでは味わえないズッシリした手応えを感じるやり取りが、何といってもこの釣り最大の魅力です。また釣った魚を持ち帰って食べてみるのもオススメ。今回はちょっと釣りに慣れてきたところでステップアップして大物を狙ってみたい方に向けて、アメリカナマズの釣り方をご紹介します。
アメリカナマズについて
まずはアメリカナマズがどんな魚なのかを見ていきましょう。
どんな魚?
アメリカナマズは名前の通り、もともとアメリカ合衆国やカナダ、メキシコに生息するナマズの仲間で、正式名称はチャネルキャットフィッシュと言います。日本には1970年代に食用目的で移入され、茨城県の霞ケ浦などで養殖されていました。しかし養殖していた個体が逃げ出して大繁殖してしまい、生態系に影響を及ぼしていることから、現在は特定外来生物に指定されています(扱い方は後半で触れていきます)。
魚体は細長い形をしており、ヒゲが生えているのが特徴的です。どことなく愛嬌のある顔をしていますが、胸びれと背びれにトゲがあるので触る際には注意が必要です。若い個体には小さな黒い斑点が多数ありますが、成長とともに消えて目立たなくなります。体は灰色と黄色が混じったようなの個体が多いですが、青みがかった灰色をしている個体もいます。
釣れる魚の大きさは体長35cm~50cmぐらいのものが中心ですが、中には1mを超える個体もいるようです。
活動時期は?
釣りのターゲットとして考えた場合、1年中釣ることのできる魚ですが、やはり水温が低くなると動きが鈍くなって釣れにくくなります。よく釣れるのは5月~10月頃ですので、あまり寒くない時期を狙うと釣果に恵まれるのではないかと思います。
ブッコミ釣りについて
アメリカナマズ釣りに必要な道具は他の釣りと大きく変わりません。ざっくり言ってしまうと竿とリールがあればとりあえず釣りをすることは可能です。
釣り方はいろいろありますが、今回はエサを使った「ブッコミ釣り」という方法をご紹介します。ブッコミ釣りとは、エサを投げ込んだまま置き竿にして魚が食いつくのを待つ釣り方です。広い範囲を探るため、竿はひとり2本~3本ぐらい用意すると効率よく釣ることができます。
必要な道具
■竿
1.8mぐらいのブラックバス用ロッド、サビキ用や投げ竿など、リールが装着できて少し遠くに投げられれるものであれば基本OKです。しかし個人的にオススメしたいのは、3m前後の振り出し式の投げ竿です。ちょっと長さがあるので小さな子どもには扱いが大変かもしれませんが、小学校高学年ぐらいであれば十分に扱えるかと思います。投げ竿は重いオモリを付けて遠くに投げることができるため、川幅の広い場所や流れの早い場所でオモリを流されないようにする時に力を発揮します。竿自体がしっかりしていて丈夫ですので、アメリカナマズの強い引きでも問題なくやり取りできて、多少強引にでも寄せてくることがでます。また、他の釣りエサ釣りでも汎用的に使えるので、これから道具を揃えるのであればぜひオススメです。
■リール
一般的に使われているのはスピニングリールと呼ばれる形状のものです。竿に合ったバランスのものを選びましょう。竿とセットで売っている安価なものでも問題ありません。目安はスピニングリールの3000番~4000番で、必ずドラグ機能が付いているものを選びましょう。私のオススメはアブガルシアというメーカーのカーディナルシリーズです。替えスプール付きで用途に応じた使い分けもでき、コストパフォーマンスに優れた機種だと思います。
■ライン(糸)
ラインもいくつか種類がありますが、どれを選んでも問題なく使用できます。ナイロンやフロロカーボンであれば20lb以上、PEであれば2号以上のものを、100m程度は巻いておきましょう。自分でラインを巻くことが難しい場合は釣具屋さんで相談してみてください。お店にもよりますが、ラインを購入すればサービスで巻いてくれるところもあります。
■仕掛け
アメリカナマズ専用の仕掛けはあまり販売されていませんが、うなぎ・アナゴの仕掛けで代用できます。オモリまでセットになった仕掛けを買えばそれだけですぐに使えるので大変オススメです。オモリは竿に合った重さのものを選びます。重すぎる場合、竿に負荷がかかって折れてしまうこともあるのでご注意ください。針は15号程度を目安に選ぶと良いと思います。慣れてきたら自分で仕掛けを作ってみるのもオススメです。
■その他
釣りの基本的な道具としては、ハサミ、針外し、プライヤー、フィッシュグリップ、雑巾(タオル)、バケツ、ゴミ袋、ライフジャケットなどがあります。魚を取り込むための網も用意しておいた方が良いですが、霞ヶ浦でしたら岸壁から水面までの距離が近い場所が多いので玉網のような本格的なものでなくても大丈夫です。
ブッコミ釣りで必要な道具としては、竿立て、アタリを取るために竿先に付ける鈴、まったり過ごすのであれば折り畳み椅子があると便利です。
また、持ち帰って食べることを考えているのであればクーラーボックスやフィッシングナイフといった道具が必要になります。
エサ
アメリカナマズは雑食性で何でも食べますので、いろいろなエサで釣ることができます。メジャーな釣りエサでいうとサバやサンマ、イカを短冊切りにしたものがあります。
その他にも豚レバーなどでもよく釣れます。コンビニで調達できる魚肉ソーセージなどで釣る方もいるようですので、いろいろ試してみるのもアリですね。
最近ではアメリカナマズ専用のエサも販売されています。テレビなどアメリカナマズ釣りが紹介されている番組ではよく使われているので、こういったものを使ってみた方が釣果が上がるかもしれません。
釣り方
仕掛けの先にエサを付けたら、竿の反発を利用して少し遠くに投げ込みます。オモリが着底したらリールを巻いて余分に放出された糸のたるみを取り、竿立てに竿を置きます。そして竿先に鈴を付け、ドラグを緩めてアタリを待ちます。
魚がエサに食いつくとアタリが出ます。いろいろなアタリの出方がありますが、竿先が小さくクンクンと動いた後、大きくお辞儀をするようなアタリが発生したら大きく竿を立てて合わせます(合わせる前にドラグを締めるのを忘れずに)。魚がかかったら一定の速度でリールを巻き、手前まで寄ってきたところで網ですくいます。魚が小さい場合は竿の反動を利用して水面から引き抜いても大丈夫ですが、竿が折れないように注意してください。
※アタリから釣り上げまでを動画でもご覧いただけます!
釣れた魚に触る際は、胸びれと背びれにあるトゲ(写真赤マル部分)に刺さらないように注意が必要です。このトゲは特に小さい魚の方が鋭利で危険ですので注意してください。
釣り場やポイントについて
釣り場情報
関東でもっともメジャーなポイントは茨城県の霞ケ浦周辺ですが、その近くにある利根川や北浦でも釣れます。中でも特に良くポイントして名前が挙がるのは常陸利根川です。その他にも以前テレビでは外浪逆浦(そとなさかうら)が紹介されていました。こちらは北浦の南に位置する湖で、浚渫工事によって所々深く掘られているポイントがあり、よく釣れるということでした。しかし霞ケ浦ならどこでも釣れるという話もあるぐらい大量に繁殖している状況ですので、現地に行って車で走りながらやりやすそうなポイントを探してみてもいいかもしれません。
アメリカナマズが釣りやすい場所
アメリカナマズはエビや小魚を食べていますので、それらが集まる場所はアメリカナマズ釣りの好ポイントになります。特に水門や護岸付近は水の流れが複雑でエサが集まりやすいので狙い目です。
霞ヶ浦は水深が浅いところが多いので、少し遠くの水深のあるところに投げてみるのもオススメです。
現地での情報収集
アメリカナマズ釣りについて情報を仕入れたい方は、潮来駅の近くにある「潮来つり具センター」に立ち寄ってみるのもよいと思います。こちらのお店はルアーフィッシング界のパイオニア的存在の村田基(はじめ)さんが店長のお店で、スタッフの方が度々テレビでもアメリカナマズ釣りを紹介しており、オリジナル商品も取り扱っています。釣りについて不安なことがあれば立ち寄ってみてください。
■潮来つり具センター(茨城県潮来市あやめ1-14-1)
釣りにおける注意点
釣りに出かける前にあらかじめ知っておいていただきたい点がありますのでここに記載いたします。
外来生物法による規制
外来生物法*1では、生態系に影響を及ぼす外来種の取り扱いを規制しており、その中でアメリカナマズは特定外来生物に指定されています。規制内容はいくつかありますが、アメリカナマズ釣りにおいては以下の点を必ず守ってください。
■生きたままの移送(運搬)は禁止
釣ったアメリカナマズを生きたまま持ち帰って飼育したり、野外に放つこと(放流)は禁止されています。個人の場合、持ち帰って飼育したら1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、生きたまま野外に放出したら3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金が科せられます。ただし釣った魚をその場ですぐに放すこと(再放流やキャッチアンドリリース)は規制の対象にはなっていません。しかし一部の地域では再放流自体も禁止する動きがあります*2。釣りに出かける際はご注意ください。なお、本記事を作成している時点で霞ヶ浦を有する茨城県は、キャッチアンドリリースを規制の対象にはしておりません。
■食用目的で持ち帰る場合の注意点
例え食べるために持ち帰る場合であっても生きたまま運搬することはできませんので、必ず現地で絞めてから持ち帰るようにしてください。
*1 環境省 自然環境局:日本の外来種対策
https://www.env.go.jp/nature/intro/index.html
*2 埼玉県:外来魚の再放流禁止に係る埼玉県内水面漁場管理委員会指示
https://www.pref.saitama.lg.jp/a0904/iinnkaishiji.html
守ってほしい釣りのマナー
釣りを行う場合は、一人ひとりがきちんとマナーを守ることが大切です。ここではみなさんに守ってほしい点について記載しておきます。
■ゴミは必ず持ち帰る
ゴミを持ち帰ることは当然のマナーですが、残念なことに釣り場には多くのゴミが転がっています。仕掛けそのものやパッケージなど、釣りをしていると案外多くのゴミが出ますので、必ずゴミ袋を持参して持ち帰るようにしてください。釣り場が汚れてしまうと環境破壊に繋がったり漁業関係者に迷惑がかかるだけでなく、釣りができる場所自体が減ってしまう恐れがります。できれば自分のゴミだけではなく、目についたものがあれば積極的に拾って帰るようにしていただければと思います。
■釣った魚を陸に放置しない
アメリカナマズは他の釣りの外道として釣れることも多く、時々陸に放置されている光景を目にすることがあります。いくら外来種だからといっても、釣った魚を岸に放置してはいけません。生き物にはみな命がありますので、ぜひ命を大切にする心をお子さんにも伝えてあげてください。もしも釣った魚を持ち帰って食べないのであれば、元気なうちに水に戻してあげましょう。
■立ち入り禁止の場所では釣りをしない
釣り場では立ち入りが禁止されている場所もあります。その場所のルールに従って釣りを楽しむようにしましょう。
実は美味しいアメリカナマズ
アメリカナマズはもともと食用目的で移入された魚で、見た目からは想像できないほど美味しい魚なんです。イギリスで有名な「フィッシュ&チップス」はナマズが使われることも多く、特に海外では日常的に食べられている魚です。特定外来生物に指定されてしまっていますが、魚自体に罪はありません。せっかく釣ることができたら、ぜひ持ち帰って食べてみてもらいたいと思います。特にフワッフワのフライは最高で、こどもたちも喜んで食べてくれます。他にも天ぷらや蒲焼もオススメです。調理方法についてはこちらの記事でご紹介しています。
実釣レポート
実際にアメリカナマズ釣りに行った時の記事はこちらからご覧いただけます。