夏になると毎年見たくなるセミの羽化の観察。茶色い幼虫からは想像もつかない程キレイで真っ白な身体が出てきて、青白い羽根が伸びていく様子は何とも言えない神秘的な光景です。今年も観察するために幼虫を探しに行きました。セミの鳴き声も盛んになってきた7月下旬でしたので、たくさんの幼虫を見かけることができました。今回はアブラゼミの幼虫を持ち帰って羽化の様子を観察した記録になります。
アブラゼミの生態
アブラゼミは日本全国の広い範囲に生息しています。体長は約60mmでセミの中では中型の部類です。見た目の特徴は頭から背中にかけては黒く、胴体部分は白が混じり、羽根は全体が茶色いまだら模様になっています。実はほとんどのセミの羽根は透明色をしており、羽根全体が不透明色のセミは世界中でも珍しいということです。
成虫は7月~9月頃が最盛期で、あの「ジリジリジリ…」という鳴き声が夏の暑さをさらに助長します(笑)。ちなみに鳴いているのはオスです。
セミの羽化は地上に出てきたその日のうちに行われますので、羽化を観察できる時期は成虫を見かける時期と重なります。
幼虫の採集
アブラゼミの幼虫は、近くの公園などで比較的簡単に採集できます。日が傾き始める18時頃になると羽化するために幼虫が地上に出てきますので、歩いている幼虫や木に登っている幼虫を捕まえます。採集方法について詳しくまとめたこちらの記事もあわせてご覧ください。
東葛飾地域ではアブラゼミが圧倒的に多く、幼虫を見つけたらほとんどアブラゼミです。ただし時々ミンミンゼミの幼虫を捕まえられることもあります。実は今回もミンミンゼミの幼虫を見つけました。アブラゼミの幼虫は全身が茶色く、ミンミンゼミの幼虫は背中が緑がかっている特徴があります。見比べてみるとわかりやすいと思います(下記写真参照)。
今回は19時頃に幼虫を探しに行きましたが、たくさんの幼虫を見つけることができました。
アブラゼミの羽化を観察
アブラゼミの羽化の様子を、時間の経過とともに見ていきます。
19時30分
持ち帰ったアブラゼミの幼虫を家の外の網戸の下の方に付けて観察を始めます。しかし元気に動き回り、一番上まで登っては下に戻すということを何回か繰り返しました。そして、ジッと動かなくなっていよいよ羽化が始まるかと思ってもまた動いたり、落ち着かない様子でした。
1時間以上その状態が続きましたが、ようやく落ち着いてきて、ツヤツヤだった背中がシワの入ったようになり、お腹も白っぽく色が変わってきました。いよいよ羽化が始まります。
20時50分
背中に縦に亀裂が入り、幼虫の青白い身体が見えてきました。
21時00分
背中の大部分と目が殻から出てきました。
21時05分
上方向に8割程度、身体が出てきました。この後は少しずつ下の方へ反り返っていきます。
21時12分
頭を下にして反り返り、腹筋を使って起き上がるために一旦休んで準備をします。落ちてしまわないかちょっと心配になりますが、このまま見守ってあげましょう。
21時25分
腹筋を使い身体を起き上がらせます。殻を掴み、安定するポジションを確保します。
21時26分
ポジションが安定したら殻から尻尾を抜いてまっすぐな姿勢になります。今回は少し不安定な感じで尻尾を抜いたため落ちてしまうのではないかとハラハラしましたが、しっかり掴まっていたようで無事でした。そしてここから丸まっていた羽根が徐々に下に伸びていきます。
21時43分
だいたい羽根が伸びきりました。この状態が一番美しい瞬間かもしれません。ここからは段々、身体と羽根が色づいていき、見慣れたアブラゼミの姿に近づていきます。観察を始めてからここまで約2時間15分が経過、背中が割れ始めてからが53分ぐらいです。観察は一旦ここで終了しました。
22時38分
あれから約1時間が経過しました。少し外側に開いていた羽根も閉じてきて、だいぶ色づいてきています。
23時40分
さらに1時間が経過しました。本日の観察はここまでにします。
翌朝06時00分
朝起きて確認してみたら、すでにセミは飛び立った後でした。無事に羽化が成功したようで安心しました。
※観察の様子を動画でもご覧いただけます
まとめ
今回は東葛飾地域でもっともポピュラーなアブラゼミの羽化の様子をお伝えいたしました。セミの羽化を一度見てみると、本当に尊く神秘的なものだと実感していただけるのではないかと思います。ぜひこの神秘的な世界をお子さんと一緒に楽しんでみてください。きっと夏休みのいい思い出になると思います!
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