みなさんはテナガエビをご存じですか? 居酒屋さんなどで「川エビのから揚げ」としてよく使われている食材、あれがテナガエビなんです。そしてこのテナガエビは近所の川でも簡単に釣れるターゲットでもあります。「ザリガニ釣りと似たようなもんでしょ?」と思っている方も多いと思いますが、実はこれがまったく違うんです。ザリガニ釣りは針を使わず、エサを挟んだところを持ち上げる釣りですが、テナガエビ釣りはちゃんと針を使って釣ります。その特有の引きに魅了される人も多く、子どもから大人まで夢中になれる釣りなんです。今回はザリガニ釣りとはひと味違ったテナガエビ釣りについてご紹介していきます。
テナガエビについて
まずはテナガエビがどんな生き物なのかを見ていきましょう。
どんな生き物?
テナガエビは名前の通り、とても手が長いエビです。特にオスは胴体よりも長い2本の前脚を持っていて、ちょっとアンバランスな印象が特徴的です。体はメスよりもオスの方が大きく、大きな個体だと20cmほどの大きさになります。
テナガエビは川や湖沼といった淡水の生き物ですが、主に河口部の少し潮が混じった汽水域に生息しています。夜行性のため日中は障害物の陰などに隠れており、夜になると活発にエサを求めて動き回りますが、日中の時間帯でも十分釣ることは可能です。
食性は肉食性で何でも食べます。イトミミズや魚の死骸、時には藻なども食べるようです。意外と獰猛な性格で、持ち帰って泥抜きをしている時に共食いを始めてしまうこともあります。
活動時期は?
釣りに適した時期は、春から秋にかけての長い間よく釣れますが、産卵のため浅場に寄ってくる初夏が最盛期になります。寒くなってくると深場へ移動して釣りにくくなるため、4月の後半から9月ごろまでが釣りやすいシーズンと言えるでしょう。
テナガエビ釣りについて
テナガエビ釣りの道具は極めてシンプルで、リールを使わずに竿に直接仕掛けを結んで釣ります。足元の障害物周りを狙いますので投げる必要はなく、ピンポイントでエサを落とすイメージになります。
必要な道具
■竿
延べ竿という、リールを装着しない竿を使うのが一般的です。長さは1.8m~3mぐらいのものが扱いやすいですが、ずっと手持ちでやる場合はもっと短いものでも構いませんし、少し遠くまで狙いたい場合はもっと長い竿を使っても良いでしょう。竿は2本~4本ぐらい用意すると効率よく釣ることができます。
■リール&ライン
延べ竿の場合、リールは使いません。
■仕掛け
仕掛けは全長2mくらいのもので、竿の長さに対して長すぎないものを用意します。ウキ、オモリ、ハリス止めをセットし、その先にハリス付きの針を付けます。釣具屋さんに行くとテナガエビ用の仕掛けがセットになったものが売っていますので、最初はそれを使うと便利です。また針は多めに持って行った方が安心です。こちらも釣具屋さんでハリス付きのものが売っています。慣れてきたら自分好みの仕掛けを作ってみるのもいいかもしれませんね。
■その他
釣りの基本的な道具として、ハサミ、ピンセット、雑巾(タオル)、バケツ、ゴミ袋、ライフジャケット、あると便利なのは竿が転がっていかないように取り付ける洗濯バサミ、折り畳み椅子などが挙げられます。なおテナガエビはザリガニ釣りと違い針に掛けて釣るので、取り込み用の網はなくても大丈夫です。持ち帰って食べるのであれば、クーラーボックスに加えてエアポンプがあった方が鮮度良く持ち帰ることができるのでオススメです。
エサ
釣具屋さんに売っている赤虫がポピュラーですが、ミミズや青イソメ、ジャリメなど、いろいろな虫エサで釣ることができます。虫エサが苦手な方に私がオススメするのはズバリ「エビ」です(笑)。冗談ではなくエビでエビを釣ります。特にブラックタイガーが良いとされていますが、私はスーパーで安価に購入できるバナメイエビを使っています。他にもボイルホタテや貝ヒモ、魚肉ソーセージやカニカマまで、割といろいろなエサで釣ることができます。いちいち釣具屋さんに行かなくてもエサが容易に調達できて、しかも安上がりなところもテナガエビ釣りの魅力のひとつですね。
仕掛けのセッティング
延べ竿の多くは、竿先にリリアンと呼ばれるひも状のものが付いていて、ここに仕掛けを結びます。この結び方を「チチワ結び」と言いますが、慣れないとちょっとわかりづらい接続方法になります。下記のサイトで丁寧に紹介されていますので、釣りに行く前にチェックしてマスターしておきましょう。
■イシグロ:糸とリリアンを結ぶ(チチワ結び)
https://www.ishiguro-gr.com/fishing-guide/detail.php?id=144
釣り場やポイントについて
釣り場情報
関東屈指のテナガエビ釣りのポイントは江戸川の下流です。特に国府台付近はテナガエビ釣りのメッカとして有名で、ベテラン釣り師も多く訪れるスポットです。国府台駅から里見公園付近まで、長い区間にわたってポイントが続きます。
もう少し北上した北総線の高架下もテトラポットが入っている好ポイントです。
なお江戸川はテナガエビの漁業権が設定されていないため、安心して釣りを楽しむことができます。
テナガエビの釣り方
延べ竿に仕掛けをセットして針にエサを付けます。エサは大きく付ける必要はなく、米粒ぐらいの大きさで十分です。準備ができたら障害物の隙間を狙って底までエサを落とします。テナガエビは底を這っている生き物ですので、必ずエサを底まで落とすことがポイントです。
ウキはアタリを取るためにつけていますので、ちょうど良くウキが立つように調整しておきましょう。セットできたらそのままアタリを待ちます。
ウキがスーッと横に動いたり、段々と沈んでいくような動きが見られたらアタリです。これはテナガエビがハサミでエサを掴んで巣穴に持って移動している状態です。この時点ではまだエサを食べていないので、焦らずじっくり様子を見ます。
しばらく待ってウキが動かなくなったらエサを食べ始めた合図です。ここで針が口に掛かるように、軽く竿を立てて合わせを入れます。
ここからゆっくり引き上げるのですが、重量感を感じた後にビビビッと後ずさりする反応が感じられます。これをエビバックと言って、テナガエビ釣りの一番面白い瞬間です。小さな体に似つかわしくないほど大きな引きを楽しむことができると思います。
1匹釣れたらそこに固まっていることも多いので、同じ穴を集中的に狙ってみましょう。アタリがなくなったら別の穴を探るようにすると釣果も上がってきます。
釣りあげた後はピンセットなどで丁寧に針を外し、水を張ったバケツやクーラーボックスに入れます。持ち帰って食べる場合はなるべく生きた状態で泥を吐かせた方がよいので、針を外す時は丁寧に行いましょう。針は必ずと言っていいほど口から頭頂部方向に掛かっていますので、胴体の方に引いてあげると簡単に外せます。エアポンプで空気を送ってあげると生存率が上がるので、テナガエビが釣れたらすぐに準備をしてあげてください。
食べて美味しいテナガエビ
テナガエビは居酒屋さんでも提供されるほど美味しいです。私は釣ったテナガエビはありがたくいただくことにしています。自分で捕った生き物を自分で食べる・・・。立派な食育だと思います。せっかく釣ることができたら、ぜひ持ち帰ってお子さんと一緒に食べてみてください。オススメの調理法は何といってもから揚げ。カリカリっとした軽い食感で子どもたちも喜んで食べてくれること間違いなしです。調理方法についてはまた別の記事でご紹介したいと思います。
守ってほしい釣りのマナー
釣りを行う場合は、一人ひとりがきちんとマナーを守ることが大切です。ここではみなさんに守ってほしい点について記載しておきます。
■ゴミは必ず持ち帰る
ゴミを持ち帰ることは当然のマナーですが、残念なことに釣り場には多くのゴミが転がっています。仕掛けそのものやパッケージなど、釣りをしていると案外多くのゴミが出ますので、必ずゴミ袋を持参して持ち帰るようにしてください。釣り場が汚れてしまうと環境破壊に繋がったり漁業関係者に迷惑がかかるだけでなく、釣りができる場所自体が減ってしまう恐れがります。できれば自分のゴミだけではなく、目についたものがあれば積極的に拾って帰るようにしていただければと思います。
■釣った魚を陸に放置しない
釣りをしていると狙った獲物以外の魚(外道)が釣れることも多く、残念ながら時々陸に放置されている光景を目にすることがあります。いくら目当ての魚でないからといっても、釣った魚を岸に放置してはいけません。生き物にはみな命がありますので、ぜひ命を大切にする心をお子さんにも伝えてあげてください。もしも釣った魚を持ち帰らないのであれば、元気なうちに水に戻してあげましょう。
■立ち入り禁止の場所では釣りをしない
釣り場では立ち入りが禁止されている場所もあります。その場所のルールに従って釣りを楽しむようにしましょう。
■漁業権の設定に注意する
川で釣りをする場合は、場所と魚種によって漁業権が設定されていることがあります。テナガエビは漁業権の対象になっていない場合が多いですが、設定されている場合は遊漁券を購入した上で釣りをするようにしてください。
まとめ
今回は近場で楽しめるテナガエビ釣りについてご紹介いたしました。
ザリガニ釣りとはまったく趣の異なる釣りを体験でき、さらにエビバックと呼ばれるあの独特の引きはやみつきになること間違いなしです。手軽に楽しむことができる釣りですので、ぜひお子さんと一緒にチャレンジしてみてください。くれぐれも安全に気をつけて、楽しく釣りをしていただければと思います!
実釣レポート
実際にテナガエビ釣りに行った時の記事はこちらからご覧いただけます。